stay homeがもたらす猫への影響を知っておこう!【幸せに暮らすための5つの基本】

今年4月、緊急事態宣言により「stay home」という言葉が定着し、私たちの生活スタイルは一気に変わりました。
あれから半年が経ち、感染症対策に気をつけながら、だんだんと外出の機会も増えてまいりましたが、仕事は可能な限りリモート、対面を避けるという風潮はこれからも続くことと思います。新型コロナが拡大する前と比べれば、日本中・・・いえ、世界中の多くの人が、おうちで過ごす時間が増えたのではないでしょうか。あなたと暮らす猫さんは、あなたの、あるいはご家族の在宅時間が増えて嬉しそうですか?それとも、ちょっと迷惑そう?環境の変化がもたらす猫への影響について、猫の行動と気持ちを汲み取りながら解説したいと思います。

 

猫は環境の変化に敏感?

環境の変化が苦手な理由

野生の猫科の動物を思い浮かべてみてください。基本的に単独で行動し、それぞれが縄張り意識を持っています。その場所で生きていくためには、狩りをして休むことができるよう、自分のテリトリーを守る必要があります。人間と暮らすようになった現代の猫たちにも、そうした元来の性質が受け継がれていると考えられます。環境が変わると不安になるのは猫の本能である事を頭に入れておきましょう。

 

おおらかな猫と慎重な猫の違い

しかし、実際に年間何十頭もの猫さんたちを見ていると、環境の変化に対する反応にはずいぶんと個体差があると感じています。来客も模様替えもへっちゃら、動物病院への通院にも動じない猫さんがいる一方、おうちで見知らぬ人の気配を感じただけですぐさま隠れる猫さんもいます。これは、そのコの胎生期、つまりお母さんのお腹の中にいた時の母猫の栄養状態やストレスなどの影響、母猫や兄弟猫との早期分離、社会化期の環境、その後の人間との関わり方等々、複数の要因が関係していると考えられます。

 

stay homeで起こる変化

さて、stay homeで何が起こるかというと、先に書いた通り人間家族の在宅時間が増えます。室内で暮らす猫たちは、365日24時間おうちで過ごしていますよね。普段、日中は誰もいなかったのに、ある日を境に常におうちの中に誰かがいるようになったとします。もしもあなたが猫だったら、どう感じるでしょうか?ご家族のことが大好きで、一緒にいる時間が増えて嬉しいと思うかも知れませんし、今まで静かにひとりで眠っていたのに調子が狂うと思うかも知れません。人間は「新型コロナだから・・・」と理由を理解していますが、猫たちはどうでしょうか。
猫たちの様子を今まで以上によく観察してみてください。不満そうな様子はありませんか?人間や同居猫との仲に変化はありませんか?食欲や排泄はどうですか?逆に人間にベッタリ四六時中離れないという事はありませんか?いつもと違う行動は、大切なそのコのサインです。

 

問題行動について考えてみよう

必ず2つの視点を持つ

ここで少し猫の問題行動について考えてみたいと思います。私のもとにご相談いただく内容で多いのは、トイレ以外の場所での排泄、いわゆる粗相です。それから、家具や壁を爪でボロボロにしてしまう、人間の手足に噛みつく、同居猫との不仲、布を食べてしまう、深夜早朝の徘徊、夜鳴き等々・・・。いずれも猫がその行動をする理由があり、私たちはその理由を探る事から始めましょう。環境など様々な原因も考えられると思いますが、まず一番最初に考えていただきたいのは、身体的な視点です。つまり、何かの病気の症状として、その行動が現れているのではないか。動物病院に相談し、診察、必要であれば検査をする事をおすすめいたします。身体的な問題がなければ、行動学的に考えてみましょう。獣医さんに相談するほどの事ではない、ご自身で判断がつかないという場合は、知識のあるキャットシッターなど、身近な猫の専門家に相談してみるのも良い方法です。

 

stay homeの意外な落とし穴

さてさて、問題行動というのは困った行動だけとは限らず、実は気がつかないうちに問題が深刻になっている場合もあります。stay homeで徐々に浮き彫りになってきたと感じるのは、分離不安です。特に新型コロナの影響で在宅時間が増え、新たに猫を迎えたご家庭の場合、甘えん坊の猫さんならきっと膝の上に乗ったり、ピッタリくっついて喉を鳴らしたりするでしょう。うーん、可愛いですよね。私も想像するだけで目尻が下がってしまいます。ほぼ1日一緒にいて、猫と人間がお互いに温もりを感じて相思相愛!こんなに幸せな事はありません。ただ、いずれコロナが終息し、外出の機会が増える事も想定しておく必要があります。いつもそばにいた人が急に留守がちになったら、相手をしてくれる時間が減ったら、あなたが猫だったらどう思いますか?室内暮らしの猫にとっては、そのおうちの中が生活の場です。ご家族が在宅でも留守でも、おうちで快適に過ごせるように室内の環境を整え、楽しく離れる練習をしてみてくださいね。

 

猫の問題行動は人間が作り出している

先日、インターネットで衝撃的な投稿を拝見しました。“コロナ禍で猫を迎えたけれども、懐かないから手放したい”という内容でした。おそらくその方が思い描いていた猫との暮らしではなかったのでしょう。では、それは懐かない猫が悪いのでしょうか?なぜその猫は懐かなかったのでしょうか?人間に懐かない猫には、懐かない理由が必ずあります。同じく、粗相をする猫には粗相をする理由があり、人間を襲う猫には人間を襲う理由があります。「問題行動」というのは人間にとっての問題ではなく、猫が生きるために困る事があるという「問題」なのです。一つ一つ向き合う事で良い方向に向かったケースはたくさんあります。「問題」を作り出しているのは人間なのではないのかと、私は日々考えています。

 

猫も人も幸せに暮らすためには

基本は5フリーダム

私たち人間に命があるように、猫にも命があり生きています。猫と暮らす人間には、猫が快適に暮らせるよう、苦痛を受けずに生活できるよう配慮する義務と責任があります。国際的動物福祉の基本には5つの自由(5フリーダム)が定められています。
・飢えと渇きからの自由
・不快からの自由
・痛み、怪我、病気からの自由
・恐怖、抑圧からの自由
・正常な行動を表現する自由

自由という言葉は、解放という言葉に置き換えるとわかりやすいと思います。つまり、飢えや渇きを感じる事のないようにしましょう、不快のないようにしましょう、痛い思いをしたり怪我や病気にならないように気を付けましょう、怖い思いや苦痛をなくしましょう、といった具合です。そして最後の“正常な行動を表現する自由”というのは、猫が猫らしく過ごせる環境を整えましょうという事。猫の生態を理解し、そのコそのコに合った環境を随時考えていく事が必要です。

5つの自由の詳細は、こちらのサイトをご参考にしてください→公益社団法人日本動物福祉協会~動物福祉について~

 

鏡である事を忘れない

私がキャットシッターwithのお客様やイベントでの猫よろず相談を受けてきた中で、いつも感じる事があります。それは、猫と暮らす人間家族の存在も、猫にとっては日々の生活の環境の一部であるという事。犬は人間と感情を共有するというデータがあるそうです。MRIで犬の脳の動きを観察した結果、人間の嬉しい、悲しいという感情、脳の動きがそのまま犬にも見られたそうです。これは猫も同じなのではないかと個人的には考えています。ご家族の不穏な空気や不安は猫にも伝わります。せっかく一緒に暮らしているのなら、猫も人も朗らかに、健やかに過ごしたいと思いませんか?

 

まとめ

コロナ禍での新しい生活に順化していく中で、日々変わる時勢に注視しつつも、猫と暮らす方々には猫との生活を変わらず楽しんでいただきたいと願っています。“猫がいるから頑張れる”一方で、“猫がいるから大変”という場面も時折あるかも知れません。そんな時は一人で悩みを抱えるのではなく、周りの人たちにどんどん相談をしましょう。一緒に考えてくれる猫仲間がいるというのは案外心強いものです。猫も人も、身体も心も整えて、楽しい猫ライフを過ごしてくださいね。

 

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